飾りじゃないのよ、おひげは
ピョンピョンした、猫のかわいいひげ。表情によって広がったり、キュッとまとまったり、ひげだけでも様々な表情が。この、猫のひげはかわいいだけではなく、猫が生きていくための大切な機能や役割がひめられています。
6カ所に生えているひげ
まず、ひげというと鼻の横のもこっとした部分(マズル)から生えたもの(上唇毛)を一番に思い浮かべると思いますが、マズル以外にも頰(頰骨毛)、あご(頭下毛)、口の端(口角毛)、眉(上毛)にも生えています。足先の少し上に生えているのもひげで合計6カ所に生えています。
太さは、体毛の2倍、生えている深さは3倍にもなります。しっかり皮膚に埋まって体液や神経とつながっているため、ひげで感じた情報を受けることができ、センサーの役割を果たしています。
とても繊細な器官のため、エサや水を飲むときに器が小さくてひげが当たる物を嫌ったりするほどです。
ひげの働き
・獲物を察知する
空気の流れから獲物のにおいを察知して、捕獲に役立てます。
・空間認識をする
猫はひげの幅で通れるか判断する、と聞いたことがあると思います。その通りで、ひげはほぼ猫の体の幅分の長さがあります。幅だけでなく、対象物との距離を測ることもできます。
・目の保護
眉のひげに限られますが、人間の眉毛と同じように、目にほこりやごみが入ることを防いだり、何かがひげに触れると目を閉じて目を守ります。
ほかにも、
・においを察知して、獲物の位置を知る
・耳では聞こえないかすかな音を空気の振動で察知する
・風や湿度などを察知する
などの機能があります。猫が生きていくうえで、とても大切な働きをしていることがわります。また、このように多機能なひげのおかげで、夜行性の猫が真っ暗闇でも狩りがうまくできる秘訣でもあります。
感情のバロメーターでもあるひげ
猫にとって、ひげで感情を表すことに特にメリットはないので、感情が出てしまうのを人間が読み取らせてもらう、という程度です。
・リラックス時
ひげには力が入っておらず、だらんと自然に下向きになります。
・興奮・警戒・緊張時
自分の周りを察知しなければいけないので、顔の周りにぶわっと開くように広がります。
・機嫌が悪い時
前に付き出すようにします。
・嬉しい時
ピンピンに伸び、やや上がります。
・怖い時
頰にペタリとひっつきます。
例外もありますが、飼っている人はだいたいわかるようになっているのではないでしょうか。
大切なセンサーを切らないで!
ピラピラして見た目が悪いからと、猫のひげを切ったり抜いたりしてしまう人がいるようですが、これは絶対にしないでください。ここまでで紹介した通り、猫のひげは高性能のセンサーです。
ひげを切るということは、人間だと視力や聴力などを奪われることと同じような感覚です。周りの状況を知ることができず、体の運動感覚もにぶってしまいます。自由に動けなくなってしまった猫は、うつ状態になったり、非常に大きな心へのダメージをもってしまうこともあります。
意図的に切らない、抜かないことはもちろんのこと、はさみを使っていている時に猫が近づいてきたことに気付かずうっかり切ってしまう、なんてこともないように気をつけてください。
このように猫が生きていくために欠かせないひげ。猫自身もひげ洗いをして、清潔に保って大切に手入れしています。また、自然に抜けた猫のひげをお財布に入れておくと金運がアップするなどラッキーアイテムという説もあるほどです。せっかくの愛猫の抜けひげ、今度見つけたらとっておいてみてはいかでしょう。何か良いことが起こるかもしれませんよ。